飲み会から帰ると汗を流してさっぱりしてから寝たいと思う人は多いでしょう。日頃から湯船に浸かるのが習慣になっている人は、ゆっくりお風呂に入る人もいると思います。家でお酒を飲むときも、寝る前に入浴したいと考えます。

しかし、飲んだ後にお風呂に入るのはいろいろな問題点があります。お風呂に入っているときに気分が悪くなった経験がある人もいると思います。

ここではお酒を飲んだあとにお風呂に入るときの注意点について説明して行きます。

二日酔いの正しい入浴法

飲酒した後にお風呂に入る場合、注意しなければならないことが多いです。ここでは1)入浴前、2)入浴中、3)入浴後に分けて、注意点について説明していきます。

入浴前の注意点

入浴する前に対策をすることで体への負担を少しでも減らすことができます。具体的には以下の3点が挙げられます。

  • 水分補給
  • 脱衣所の温度を上げておく
  • 家族に一声かける

続いて、それぞれについて解説していきます。

・水分補給

お酒を飲むとトイレに行く回数が増える人は多いと思います。これはアルコールに尿の量を増やす利尿作用があるからです。下記のように、ビールを1000mL飲むと、飲んだ量よりも多い1100mLの尿が出たという報告もあります。

引用:大塚製薬ホームページより

つまり、実際に飲んだ水分量よりも多くの水が体内から放出されるのです。

このように、お酒を飲むと体から水分が奪われるので、飲み会が終わって帰宅したときには、体が脱水状態になっています。

入浴すると体温が上昇して汗をかきます。特に夏場は入浴後に大量の汗を吹き出す人も多いでしょう。汗をかくことは、脱水がさらに進行することを意味します。したがって、入浴前に水分を少しでも摂取しておくことで、脱水が悪化するのを防ぐことができます

このときに摂取するのは、ただの水道水ではなく、スポーツドリンクのように汗の成分が含まれるものを飲んだ方がよいです。水だけを飲むと胃への負担が大きいです。また、スポーツドリンクは体に吸収されやすく作られているので、水分補給には有効です。

・脱衣所の温度を上げておく

夏場は脱衣所の温度を気にすることはないと思います。

一方で、冬場は脱衣所で寒い思いをして、全身に鳥肌が立ったことがある人は多いと思います。この現象は、脱衣所の温度が他の部屋と比べて低いために起きます。

冬場であれば、湯船がお湯で満たされた浴室の温度は、脱衣所よりも10℃以上高いこともあります。さらに、湯船に浸かると水温は約40℃と、脱衣所の気温に比べるとかなり高いです。

このように部屋ごとに気温が大きく異なることが問題になります。そして、寒さや温かさを感じるときに重要なのは、「温度の変化で血管が収縮したり拡張して、血圧が変動したりすること」です。

人の体は寒さを感じると、体の表面から熱が逃げていくのを抑えようとします。そのため血管が縮んで血圧が上昇するのです。

逆に暑さを感じると、体温が上がりすぎないように、体の表面から熱を逃がす必要があります。そのため血管が拡張して血圧が低下します。

例えば、夏よりも冬の血圧の方が高い人は多いと思います。私は薬剤師として働いていますが、高血圧症の予備軍の患者さんの中には、血圧が高めの冬場だけ血圧を下げる薬を飲んでいる人もいます。

では、入浴前後で血管にどのような影響があり、血圧はどのように変動するのでしょうか。下に入浴前後の血圧変動のグラフを示します。

引用:App. Human Sci. 1996,15,19

まず、脱衣所が寒いので、血管は収縮して、血圧は上昇します(図中①)。続いて、湯船に浸かるので、体が興奮してきます。これは日中活動するときに働く交感神経が刺激されることによります。このため血圧がさらに上昇します(図中②)。

そして、しばらく湯船に浸かっていると体が温まることで血管が拡張し、血圧が低下します(図中③)。

湯船から出て脱衣所に行くと寒さを感じるので、血管が収縮し、血圧が上昇します(図中④)。最終的に暖かい部屋に移動すると、徐々に血管が拡張して血圧が下がります(図中⑤)。

このように入浴前後で血圧は大きく変動します。そして、この血圧変動は、お酒を飲んでも飲まなくても起きます。

ここでお酒を飲むとさらに血圧の変動が大きくなる可能性があります。なぜなら、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドには血管を広げて、血圧を低下させる作用があるからです。

アセトアルデヒドの影響で血圧が下がると、お酒を飲まないときと比べてより血圧の変動が大きくなります。その結果、立ちくらみなどを生じることがあるのです。

また、もともと血圧が高い人は日頃から血管に負担がかかっている状態です。その状態で大きな血圧の変動が起きると、最悪の場合、狭心症心筋梗塞脳梗塞などになってしまい、命に関わる状態に陥ることもあります。

このように、何も対策をしないでお風呂に入ると、部屋ごとの気温の差が大きいので、血圧が大きく変動してしまいます。そこで、少しでも血圧の変動を少なくするためには、脱衣所の温度を高くしておくことが効果的です。

具体的には脱衣所の扉を開けておいて、部屋や浴室の空気を入れることで温度をあげることができます。また、脱衣所に暖房器具を設置するのも一つの方法です。何かしらの対策を講じることで、少しでも部屋ごとの温度差を少なくした方がよいでしょう。

・家族に一声かける

同居している家族がいる人は、入浴前に家族の人に一声かけるようにしましょう。これは湯船で寝入ってしまったり、体調が急変する可能性があったりするためです。

入浴中に寝入ってしまうと、最悪の場合溺死する可能性もあります。現在、交通事故で亡くなる方は年間約4千人といわれていますが、入浴中の事故での死亡者数は約5千人と報告されています。

そして以下の図で示すように、その事故の多くは冬場に起きています。全てが溺死ではありませんが、体調が急変して正常な行動がとれなくなると、危険な状態になることは間違いありません。

引用:消費者庁 News Release 平成29年1月25日

また、入浴中に吐き気を催した経験がある人もいると思います。これは体が温まることで血流がよくなり、アルコールが全身を回るようになるからです。

私の友人は大量の飲酒後、温泉の湯船に浸かっているときに急激に気分が悪くなり、そのまま激しく嘔吐をしてしまい、病院に搬送されたことがあります。このときは周囲に人がいたので、なんとか助けを呼ぶことができました。

このように飲酒してお風呂に入ると、体調が急変する可能性があります。一刻も早く家族や周囲の人に気づいてもらうために、お風呂に入る前に声をかけるようにしましょう。

入浴中の注意点

ただ入浴前に対策を講じても、入浴の方法が悪いと危険なことが起きることがあります。入浴中には以下の2点に注意する必要があります。

  • ぬるま湯に浸かる
  • 時間を短時間にする

これらについて説明していきます。

・ぬるま湯に浸かる

お酒を飲んでから入浴する場合は、温度を低めに設定する方がよいです。なぜなら、体を温めすぎる可能性があるからです。

日頃はお風呂にお湯をはるときに、何℃に設定しているでしょうか。おそらく41〜42℃に設定している人が多いのではないでしょうか。

私は夏は39℃で、冬は40℃にしています。私は暑がりなので、この温度でも5〜10分でのぼせそうになるので、早めに風呂から出ます。

体が温まると代謝がよくなるので、アルコールの分解は早まります。しかし、同時に血流がよくなるので、アルコールが全身に回ってしまいます。その結果、気持ち悪くなったり、頭が痛くなったりすることがあるのです。

したがって、入浴するときはほどよく体を温めることが重要になります。お風呂の温度は1℃変えるだけでも、体感温度はかなり変わります。お酒を飲むときはお風呂の温度を少し低めに設定するか、水を入れて少し冷ましてから入るといいでしょう。

・入浴時間は短時間にする

お酒を飲んだときの入浴は、短時間で終わらせる必要があります。その理由は前述の通り、体を温めすぎないようにするためです。

飲み会が終わって帰宅したときには、一日の疲れがかなり溜まっています。お酒を飲んでいなくても湯船に浸かったまま寝てしまった経験がある人は多いと思います。私も入浴剤をいれた風呂に入ったまま寝入ってしまい、30分後くらいに飛び起きた経験は何度もあります。

入浴の時間が長くなると、その分だけ体は温まります。そのため血行がよくなりすぎてしまい、吐き気などが起きる可能性が高くなってしまいます。

また、ゆっくり湯船に浸かることでそのまま寝入ってしまい、溺れてしまう可能性もあります。

このように、お酒を飲んだ後に長時間お風呂に入ることは危険でしかありません。お酒を飲んだ後にお風呂に入る場合は短時間で切り上げるようにしましょう。

入浴後の注意点

お風呂に長く入りすぎないことは大切ですが、湯船から出るときも油断をしてはいけません。出るときに状態が急変して大怪我をすることもあります。

特に湯船に入った状態から急に立ち上がると、めまいが生じて転倒する可能性があるので危険です

これは立ちくらみと同じ現象です。横になっている状態から立ち上がったり、椅子から立ち上がったりしたときに頭がふらっとなった経験がある人は多いと思います。

対策としては、ゆっくりと立ち上がることが一番です。一気に立ち上がるのではなく、一旦浴槽の縁に座り、ふらつきがないことを確認してからゆっくり立ち上がるのがよいでしょう。動きもゆっくりがよいです。

また、立ち上がる前に湯船の中で体を少し動かすことも効果的です。これは立ち上がる前に全身への血流を少しでもよくするためです。具体的には、手足を曲げ伸ばしするだけでも大丈夫です。

事前に全身の血流を少しよくすることで、立ち上がったときの血流の増加を少しでも緩やかにできます。

風呂に入るときにやってはいけないこと

ここまで風呂に入るときの注意点について確認してきました。泥酔状態でない限り、上記の内容に注意すれば大きな問題が起きることは稀です。ただし、これらは自宅で入浴する場合の話です。

外泊時に、お酒を飲んでお風呂に入る機会もあると思います。例えば、旅行先で温泉に入るときに、お酒を飲んでから改めて温泉に入り直すような場面もあるでしょう。このような場面では、入浴施設ならではの注意点があります。

サウナ

公共の施設やホテルによっては、お風呂にサウナが併設されているところもあります。食事のあとに風呂に入り直して、サウナに入ることもあると思います。

しかし、お酒を飲んだ後にサウナに入るのは大変危険なのでやめましょう

サウナ内の温度は約90℃になっており、かなり高温です。そして、当然大量の汗をかきます。

体温が上がることでアルコールが全身に回り、体調が悪くなることについてはすでに説明した通りです。

また、お酒を飲んだ後は体が脱水状態になっています。その状態で大量の汗をかくことはかなり危険です。なぜなら、汗をかくことで血液がドロドロになってしまい、心筋梗塞などが起きるリスクが高くなるからです。

水風呂

お酒を飲んで水風呂に入ることも大変危険なことです。サウナが危険という話をしたので、水風呂が危険なことはある程度想像ができると思います。

水風呂に入ると、血管が収縮するので、急激に血圧が上昇してしまいます。要するにサウナに入ったときと逆の現象が起きるのです。

水風呂では汗はかきませんが、体温の変化が激しいです。急激に体温が下がるので、血管が一気に収縮してしまい、血圧が急上昇します。血管に大きな負担がかかるのは明らかです。

このように、お酒を飲んだ後は、サウナや水風呂のような過酷な環境は避けるべきです

シャワーを浴びることは効果的か

ここまでお酒を飲んだ後にお風呂に入るときの注意点について説明してきました。しかし、最近では湯船には浸からずにシャワーだけで済ませている人も多いのではないでしょうか。

お酒を飲んだ後は、風呂に入るよりはシャワーの方が体への負担が少ないです。なぜなら、シャワーの方が体温の変動が少ないからです。

そして、シャワーを浴びるときは熱いシャワーではなくぬるめにするようにしましょう。お風呂に入らなくても、熱いシャワーを浴びると血流がよくなりすぎてしまい、体調を崩してしまうからです。

風呂に比べてシャワーの方がよい理由はもう1つあります。それは、万が一転倒しても溺れることがないことです。

湯船に浸かっていないと溺死することはありません。怪我はするかもしれませんが、命が危なくなるリスクはかなり低くなります。

お酒を飲んだ後にお風呂に入ると気持ちいいのはよくわかります。しかし、同時に危険性もあることを認識しておかなければなりません。

二日酔いの予防のつもりで寝る前にお風呂に入っている人もいると思います。寝る前にどうしても汗を流してスッキリしたいときは、極力シャワーにしておいた方がよいでしょう。

朝風呂は二日酔いの解消に効果的か

二日酔いの治し方は人それぞれあると思います。では、朝起きてからお風呂に入るのは効果があるのでしょうか。

こちらは、飲酒後にお風呂に入る場合と同じ点に注意すれば基本的には問題ないです。

一般的には体重60kgの人がビール350mLを飲むと、アルコールが抜けるまでに約3時間かかるといわれています。しかし、アルコールの分解速度にはかなり個人差があります。二日酔いになったことがない人もいれば、朝起きてもまだ酔っ払っている経験をしたことがある人もいると思います。

朝起きて、二日酔いになっていなかったり、アルコールが抜けていたりする状態であれば朝風呂やシャワーは問題ないです。ただし、このときも熱い風呂に入るのではなく、ぬるま湯にしておいた方が無難です。血流がよくなりすぎてしまい、吐き気や頭痛が起きてしまうことがあるからです。

ただ、朝起きたときに気持ち悪い場合は、お風呂ではなくシャワーの方がよいでしょう。

私はお酒に強い方ではなく、翌日の朝でもお酒が残っていることは頻繁にあります。

私はお酒をたくさん飲んだ日の夜は、入浴をせず、シャワーも浴びないようにしています。理由は少しでも睡眠時間をとるためです。

入浴することで眠気が覚めてしまうと、寝るまでに時間がかかってしまい、翌日まで疲れが残りやすくなってしまいます。あとは、少しでも早く寝たいので入浴するのがめんどくさいというもの理由の1つです。

その代わりに、朝起きたときには必ずシャワーを浴びてスッキリするようにしています。体を少し温めることで、二日酔いの解消にも繋がります。この方法であればお酒を飲んだ翌日なので、シャワーを浴びているときに体調を崩すリスクは低いです。

まとめ

ここではお酒を飲んだ後にお風呂に入るときの注意点について説明しました。

可能であれば、お酒を飲む前にお風呂に入るようにしましょう。そして、飲酒後であればお風呂には入らずに、ぬるめのシャワーを浴びるだけの方が安全です。

もしお風呂に入るときには、ぬるま湯に浸かって早く出るようにし、体温の変化を少しでも少なくする必要があります。最悪の場合、命の危険に晒される可能性があるので注意しなければなりません。

お酒を飲んだ翌日の朝も、飲酒後と同様に注意した方がよいです。そして、翌日も体調がすぐれないときは、安静にして入浴は避けたほうがよいでしょう。