お酒を飲んだ翌日には吐き気、頭痛、めまいなど色々な影響が出ます。その中でも私は、高頻度で下痢になります。そして飲みすぎた場合は、水のような便が出ることも珍しくありません。

お酒をたくさん飲んだ翌日に、下痢かどうかを周囲の人と話すことはあまりないと思います。そのため、周りの人が下痢で困っているかを知ることはほとんどないでしょう。

しかし、お酒を飲むと下痢になるのはちゃんとした理由があります。実際、お酒を飲みすぎた翌日は多くの人が下痢で困っています。

ここでは、お酒を飲みすぎて二日酔いになった時になぜ下痢になるのか、下痢になった時はどう対処すればよいかについて説明していきます。

下痢とはどのような状況か

どのような食事をしても、基本的には同じように便が出ます。まずは、食べた物が体の中でどのように処理されて便になるのかについて説明します。

まず食べ物を摂取すると、必要な栄養分や水分は体の中に吸収されて利用されます。そして、体に必要ないものは最終的に便として肛門から排泄されます。

食べた物は口から肛門までの間に「胃→十二指腸→小腸→大腸」を通ります。食べたものはそれぞれの場所で処理されて、最終的に便が出来上がります。

食べた物は最初に入る胃と、その次に通過する十二指腸で主に「消化」を受けます。胃では胃液が、十二指腸では肝臓で作られる胆汁が働くことで、食べ物をドロドロにします。

続いて通過する小腸では「栄養分の吸収」が行われます。食べた物が胃や十二指腸で消化されてドロドロになることで、栄養分がしっかりと吸収されます。

最後に通過する大腸では「水分の吸収」が行われます。この大腸での水分の吸収量が少ないと下痢になってしまいます。

このように食べたものは体の中を通過する間に栄養分と水分を吸収されて、最終的に便として排泄されます

・便に含まれる水分量が多いと下痢になる

バランスのいい食事を摂取し、しっかり睡眠がとれているなど、規則正しい生活を送れている時の便は形があります。これを普通便と呼びます。

小腸や大腸がしっかり働いてくれるので、栄養分と水分が吸収されて、普通便ができるのです。

普通便には体の中に吸収されなかったものが含まれていますが、実は便の約80%は水分です。

一方で、下痢の時は水分の割合が多くなります。水のような便(水下痢)であれば90%以上が水です。逆に水分量が60%程度になるとコロコロの便になります。

このように、便に含まれる水分の量が増えることで下痢になります

お酒を飲んで下痢になる理由

さまざまな原因によって便に含まれる水分量が多くなることで下痢になるのです。

続いて、お酒の飲みすぎがどのように影響して下痢になるのかについて説明します。

アルコールによって胃や腸が刺激を受ける

スーパーマーケットや役所に行ったときに、入り口で手の消毒をしたことがあると思います。その時に手に怪我をしていて激痛に襲われた経験はないでしょうか。

私は薬剤師として働いているので、頻繁に手の消毒をします。その時に指に怪我をしていると、痛すぎて涙がでそうになることもあります。

このようにアルコールには刺激性があります。そして、この刺激は胃や腸の動きにも影響を及ぼします。

アルコールによる刺激を受けると、小腸や大腸の動きが速くなってしまいます。その結果、食べた物も小腸と大腸を速く通過してしまい、栄養分や水分の吸収が不十分になってしまいます。

このように、アルコールによって小腸、大腸の動きが速くなることで下痢になります

消化不良を起こす

お酒を飲む時は何かしら食べながら飲むと思います。私は揚げ物が好きなので、居酒屋で飲む時は唐揚げやフライドポテトなどの脂っこいものを注文してしまいます。

そして、飲み会の最後には「締めのラーメン」を食べる人もいるでしょう。私も食べると太ってしまうのでやめておこうと思いますが、最終的にはラーメンを食べてしまうことが多いです。

このように、お酒を飲む時には無意識のうちに脂分を多く摂取しています。実はこの脂分が下痢の原因となってしまうのです。

脂分の分解には肝臓で作られる胆汁が関わります。お酒を飲んでいないときは特に問題はありませんが、お酒を飲み始めると肝臓はアルコールの分解に専念し始めてしまいます。その結果、作られる胆汁の量が減ってしまいます。

胆汁の量が減ると、食べ物が十分に消化されないままになってしまい、大腸での水分の吸収も不十分になります

このように、脂分が多い食べ物を多く食べることで消化不良を起こしてしまい、下痢になってしまうことがあります。

摂取する水分量が多い

お酒を毎日飲む人の中で、缶ビールを1本しか飲まないという人は少ないのではないでしょうか。私はお酒に弱いですが、家で飲む時は缶ビールの350mLを2〜3本飲みます。さらに、飲み会の場合は、そこから日本酒を飲んだりワインを飲んだりします。

この飲んだ量を簡単に計算しただけでも1000mL程度はあります。これは500mLのペットボトル2本分です。

あくまで私が飲んでいる量なので、もっとたくさんのお酒を飲む人の中は、1日にビールを2000mL程度飲む人もいるでしょう。そうなると2Lのペットボトル1本分です。

この量を2~3時間の間に飲むことになります。どう考えても水分の摂取量が多いです。昼間であれば、この量の飲み物を2~3時間で飲むのは激しい運動をしている時ぐらいでしょう。

このように、お酒を飲む時は水分量としてはたくさん摂取しています。この大量の水分が体内に吸収されずにそのまま便に含まれることで下痢になってしまうのです

ビールに含まれる炭水化物も下痢の原因

食べ物を食べると胃液や胆汁によって分解されますが、腸内細菌も食べ物の分解に関わっています。この腸内細菌による分解のことを発酵と呼びます。

ちなみに、ビールは麦芽を発酵させて作りますし、ワインはブドウを発酵させて作ります。このようにたくさんの種類の発酵が知られていますが、その中には発酵と同時にガスが発生するものがあります

発酵によって発生するガスの1つにおならの臭い成分のガスがあります。おならのほとんどは口から飲み込んだ空気ですが、腸内細菌の発酵によって生じたガスが、あの独特な臭いを生み出しています。

食べ物に含まれる成分の中で、炭水化物の発酵によってもガスが生じます。炭水化物は米や麺類に含まれますが、ビールにも炭水化物が多く含まれています。

炭水化物の発酵によって発生したガスが大腸を刺激します。この刺激で大腸の動きが活発になってしまい、その結果として下痢になってしまうのです。

ビールの他にも、日本酒には炭水化物が多く含まれています。一方、ワインは炭水化物の量が少ないと言われています。

このように、炭水化物が発酵を受け、ガスが発生することで下痢になることがあります。

下痢にならないための対策

できることなら下痢にはなりたくないものです。そのためにはお酒を飲みすぎないことは当然ですが、他にもできる対策があります。それはおつまみの内容を工夫することです。

消化の悪いものを食べると下痢になりやすくなるので、お酒を飲むときのおつまみの内容によっては下痢になりにくくすることができます。

消化が悪い食べ物は糖質や脂質が多いもの。典型的なものとしては、締めのラーメンは最悪です。

しかし、糖質や脂質を完全に避けることはできません。そこで、少しでも消化がいいものを食べるようにしましょう。

具体的にはキャベツ、枝豆、冷奴は消化がいいと言われています。このようなメニューを混ぜることで多少は下痢になりにくくなるでしょう。

下痢になったときの治し方

お酒を大量に飲んでしまうとどうしても下痢になってしまいます。そのようなときは以下のような対策をとり、早く体を元気にするようにしましょう。

整腸剤を飲む

便の作成には腸の中に住んでいる腸内細菌が活躍します。腸内細菌は1000種類ほど知られていますが、そのなかでも善玉菌の働きが大切です。

善玉菌は食べ物の消化や吸収に大切な役割をします。しかし、お酒を飲みすぎたり、生活のリズムが不規則になったりすると善玉菌が減ってしまいます。その結果、便の調子が悪くなってしまうのです。

そこで善玉菌を補充することで、腸内細菌のバランスが整い、便の状態が正常になっていきます

整腸剤は副作用もほとんどなく、誰でも安心して飲むことができます。ドラッグストアでもザガードなどの整腸剤が販売されており、手軽に購入することができます。

ただし、整腸剤は飲んでから効き目が現れるまでには時間がかかることを頭の片隅に置いておきましょう。

下痢止めを飲む

下痢止めの作用はとてもシンプルです。それは大腸の動きを抑えてしまうことによります。

便は大腸を移動しながら徐々に水分を奪われて行き、最終的に硬い便になります。そこで、大腸の動きを抑えてやることで便の動きがゆっくりになり、水分を奪うための時間が長くなります

便秘で困っている人はカチカチの便が出ます。私が働いている病院でも便秘の患者さんは多く、便が固くて困っているという話は頻繁に聞きます。これは便が大腸の中に長期間あることによって、水分が奪われすぎることによる影響です。

下痢止めも正露丸などドラッグストアで手軽に購入できるようになっています。

しかし、下痢止めを使用する時は注意しなければならない場面があります。それは食中毒のような場合です。

食中毒の時は下痢止めの使用はしてはいけません。それは原因の菌、ウイルス、毒素を下痢として体の外に出す必要があるからです。下痢止めで便を止めてしまうと、いつまでも体の中に下痢の原因が残ってしまいます。

明らかにお酒の飲み過ぎによる下痢であれば問題ないです。しかし、下痢止めを使用してはいけない場合もあるので、下痢止めは慎重に使用した方がよいでしょう。

水分を摂取する

下痢の時は水分が体からどんどん抜けている状態です。しかも、お酒を飲んだ翌日の体は脱水状態になっています。

この状態で下痢が続くと、体の水分はさらに失われてしまい、二日酔いの回復がどんどん遅くなってしまいます。

また、下痢の時は水分だけでなく、体にとって重要な栄養分の塩分も大量に失われます

汗が口に入るとしょっぱいと感じます。これは汗に塩分が含まれているからです。言い換えると、下痢をしている時は汗を大量にかいているのと同じような状態と言えます。

この状態を放置しておくと、脱水により体は痩せる一方で、体力の回復には時間がかかります。

このような時に摂取するのは水ではなく、スポーツドリンク経口補水液の方が望ましいです。水には塩分はほぼ含まれていません。

ポカリスエット やアクエリアスのようなスポーツドリンクであれば、塩分だけでなく糖分も含まれています。そのため、二日酔いで食事が食べられないような時に栄養分が補給できます。

また、経口補水液は水分が体に吸収されやすいように設計された飲み物です。糖分はほぼ含まれていないので栄養補給には適しませんが、逆に糖尿病のように高血糖に注意が必要な人には適しています。

このように、下痢の時はスポーツドリンクや経口補水液で水分を補給し、脱水悪化を予防することが大切です。

下痢が長引くようであれば要注意

二日酔いで下痢になることは珍しいことではありません。しかし、何もしなくても2日目、3日目には治ることがほとんどです。

しかし、以下のような症状が続く場合は別の病気にかかっている可能性があるので注意が必要です。

・下痢、吐き気、腹痛が続く場合

このような症状が続く時は「急性胃腸炎」の可能性があります。急性胃腸炎と二日酔いは症状が似ています。

急性胃腸炎も二日酔いと同じように嘔吐、下痢、腹痛が主な症状です。これらの大きな違いは、急性胃腸炎は主に細菌やウイルスが原因で起きます

二日酔いはお酒の飲み過ぎによって起きるので、急性胃腸炎とは原因が違います。しかし、その症状は似ているので、違いを見分けるのは難しいです。

お酒をどのくらい飲むかにもよりますが、二日酔いは昼頃にはある程度解消されます。しかし、急性胃腸炎はそんなに早くはよくなりません

時間が経ってもなかなか症状が改善しなかったり、発熱や寒気があったりすれば急性胃腸炎になっている可能性もあります。

・出血がある

便に血が混ざることは普通ではあり得ません。便に血が混ざるということは、どこからか出血しているということです。

肛門に痛みがあれば痔になっている可能性があります。私の知り合いは、飲み会で多量のお酒を飲んで痔になっていました。その人は病院に通院し、処方された薬を使用したことで治癒したそうです。

また、可能性は低いですが、大腸ガンになっているかもしれません。私が働いている病院でも、血便が出て病院を受診して、検査をした結果、大腸癌が見つかった患者さんを何人か知っています。

大腸がんが見つかるのは高齢者が多いですが、出血が続くようであれば若い人でも可能性はあります。

大腸癌の場合はお酒を飲むか飲まないかは関係ありませんが、血便があるようであれば一度病院を受診してみたほうがよいでしょう。

・便の色が黒い

便の色は黒い時も注意が必要です。特に食道、胃、十二指腸からの出血している場合、便の色が黒色になることがあります

血液は本来赤色ですが、胃から肛門までの間に胃酸や腸内細菌によって赤色から黒色に変わってしまうのです。

体調の変化は便の色や形に現れやすいです。お酒を飲んだ日以外にも、日頃から便の状態を確認する習慣をつけると、体の異常を発見しやすくなります

・腹痛

前日にお酒を飲みすぎると、朝起きた時にお腹がぐるぐる鳴って、明らかにお腹が変なのを感じることがあると思います。私はひどい時は腹痛に襲われて、悶絶することもあります。しかし、トイレに行って便を出すと痛みはかなり楽になります。

この時に、トイレに行っても腹痛が全然改善しないようであれば注意が必要です。なぜならすい臓が炎症を起こしてしまっている可能性があるからです。この状態は医学的には「急性すい炎」と呼ばれます。

急性すい炎はお腹が痛いだけではなく、重症化するとすい臓以外の臓器にも炎症が広がってしまいます。このような時は早急に病院を受診した方がよいです。

大腸が過敏に動く時の腹痛と、急性すい炎による腹痛は痛みがでる場所が違います。下痢の場合はお腹の下の方が痛みますが、急性すい炎の場合はお腹の上の方(みぞおち)が痛みます

このように、普段とは異なる場所の腹痛が続くようであれば急性すい炎の可能性があります。

まとめ

ここでは、お酒を飲みすぎた時の下痢について原因や対処法の解説をしてきました。

お酒を飲みすぎると、アルコールが直接胃腸を刺激することや、発酵によるガス、消化不良によって間接的に下痢になります。

下痢はほとんどの場合は何もしなくても改善しますが、整腸剤、下痢止めなどを使用することもできます。また、下痢であっても体は脱水状態なので、水分はこまめに摂取するのがよいでしょう。

下痢の状態によっては他の病気になってしまっている場合もあるので、症状が続くようであれば注意が必要です。

お酒の飲み過ぎには、下痢になりやすくなるような原因がたくさん含まれます。お酒を飲みすぎないだけでなく、食べる物を工夫したり、整腸剤などのサプリメントを使用したりして下痢を予防するようにしましょう。