お酒を飲んだ翌日の朝、喉が乾いていることが多いと思います。このようなときにあなたは何を飲みますか。
飲み物はコンビニやスーパーに行けば、いろいろな種類の飲み物が売られています。基本的には、どの飲み物を飲んでも水分は補給できます。
そのなかでも経口補水液を飲む人はいるでしょうか。経口補水液は夏場にCMが流れており、水分補給のための飲み物として認知されています。
私の両親は、夏場になると経口補水液を箱で大量に購入しています。そして、実家の畑仕事をするときに経口補水液を飲んで水分を補給しています。
では、なぜ経口補水液が水分補給のための飲み物として宣伝されているのでしょうか。同じように脱水のときに飲むことが多いスポーツドリンクとはどのような違いがあるのでしょうか。そして、二日酔いのときに経口補水液を飲むと症状は改善するのでしょうか。
ここでは、「経口補水液の特徴」「経口補水液が二日酔いの改善や予防にどのような効果があるか」「経口補水液を飲むときの注意点」などについて説明していきます。
もくじ
経口補水液によって、水分と塩分が補給できる
お酒を飲みすぎた翌日は、吐き気、頭痛、めまいなどの症状に襲われます。これらはアルコールを摂取しすぎたことによる影響です。
アルコールの過剰摂取によって、体にいろいろな悪影響が現れますが、そのなかでも代表的なものが脱水と低血糖です。そして、経口補水液にはこれらを改善するための成分が含まれています。
お酒を飲むと水分と塩分が失われる
アルコールには尿の量を増やす利尿作用があります。この作用は、アルコールが脳に働きかけて、尿の量を調節しているホルモンの量を減らすことにより発現します。
私は、日中はあまりトイレに行きません。仕事中も1〜2回くらいしかトイレに行かないことがほとんどです。しかし、お酒を飲むと1時間に1回くらいは行くようになります。これはアルコールを飲んだことによって尿の量が増えている影響です。
尿の量が増えることで、体の中の水分が失われます。したがって、お酒を飲んだあとは体が脱水状態になっています。
また、体が脱水状態のときは、水と一緒に塩分も失われています。体から水分が出るときは、水だけが出ることはありません。必ず塩分も一緒に出て行きます。
汗が口の中に入ったことがあるでしょうか。特に夏場の暑いときは、汗が口に入ってしまうことがあると思います。このときにしょっぱいと感じるのは、汗の中に塩分が含まれているからです。
汗と同じように、尿の中にも塩分が含まれています。したがって、脱水のときは水分だけでなく塩分も補う必要があります。
そして、経口補水液には、水分と塩分が含まれています。下に経口補水液の中で代表的なOS-1の原材料の表記を載せています。
経口補水液の中で最も有名な商品はOS-1だと思います。実際にOS-1を飲んだことがある人は多いと思いますが、汗をかいていない通常のときに飲んだことはあるでしょうか。
実際に飲んでみるとわかりますが、脱水ではないときに飲むとかなりしょっぱく感じます。OS-1に塩分が含まれていることがよくわかると思います。
経口補水液には糖分も含まれる
二日酔いのときは体が低血糖になっています。これもアルコールを飲んだことによる影響です。
アルコールは体に吸収されると肝臓で分解されます。分解されると二日酔いの原因物質の1つであるアセトアルデヒドになります。そして、アセトアルデヒドも肝臓で分解されて、体にとって毒性がない酢酸になります。
アルコールを飲むと肝臓はこのような分解をしなければなりません。しかし、肝臓の仕事はアルコールを分解することだけではなく、人間が生きるために大切な仕事をたくさんしています。
そして、肝臓の仕事の1つに「糖分の生成」があります。肝臓は糖分の貯蔵庫として働いており、血糖値に応じて糖分を放出する仕事をしています。
アルコールやアセトアルデヒドは体にとって異物であり、毒性があるので、速く分解しなければなりません。そこで、お酒を飲むと、肝臓はアルコールやアセトアルデヒドの分解に専念し始めます。その結果、糖分の生成ができなくなってしまい、低血糖になってしまうのです。
経口補水液に含まれるのは塩分だけではありません。下の写真で示すように、経口補水液には糖分(ブドウ糖)もわずかですが含まれています。
500mLのペットボトルを1本飲むと9gの糖分が摂取できます。しかし、正直この量はかなり少ないです。おにぎりに置き換えると約1/4個分相当の糖分です。
このように、経口補水液には糖分も含まれていますが、その量は十分量ではないことを把握しておく必要があります。
経口補水液とスポーツドリンクの違い
経口補水液と同じように水分、塩分、糖分が摂取できる飲み物にスポーツドリンクがあります。含まれる成分は両者ともほぼ同じなので、二日酔いのときにスポーツドリンクを飲む人もいると思います。
では、経口補水液とスポーツドリンクにはどのような違いがあるのでしょうか。
経口補水液の方が、塩分量が多く、糖分が少ない
経口補水液の代表例のOS-1と、スポーツドリンクの代表例のアクエリアスとポカリスエットの100mLに含まれる成分量をそれぞれ下に載せています。なお、炭水化物は糖分が繋がったものなので、炭水化物が多い=糖分が多いと置き換えてもらっても問題ありません。
OS-1 | アクエリアス | ポカリスエット | |
食塩相当量 | 0.292g | 0.1g | 0.12g |
炭水化物(糖分) | 2.5g | 4.7g | 6.2g |
表で示すように、経口補水液のOS-1には、スポーツドリンクの約3倍の塩分が含まれていることがわかります。その一方で、経口補水液に含まれる糖分はスポーツドリンクの半分程度であることがわかります。
このようなことから、経口補水液は塩分の補充に重点をおいた製品であることがわかります。
経口補水液は水分が体内に吸収されやすいように工夫されている
経口補水液の特徴の1つに、水分が吸収されやすいというものがあります。
水分の吸収されやすさについては「2つの液体の濃度の差が大きいほど水分は移動しやすい」という重要な考え方があります。この考え方についてナメクジを例にして説明します。
ナメクジに塩をかけるとナメクジが小さくなるのを知っている人は多いと思います。
ナメクジの表面は粘液という液体で覆われています。ここに塩をかけると、塩が粘液に溶け込んで、非常に濃い食塩水が出来上がります。
その一方で、ナメクジの体内の液(体液)はそれほど濃くはありません。ここで粘液と体液の間に濃度差が生じます。
この濃度差を小さくするために、濃度が薄い体液から濃度が濃い粘液の方に水が移動します。その結果、体液の量が減るので、ナメクジが小さくなります。
そして、経口補水液は体液よりも薄く作られています。そのため、水分が体内に効率よく吸収されます。
一方で、スポーツドリンクは体液と同じか、やや濃いです。もちろんスポーツドリンクを飲んでも水分は吸収されますが、経口補水液よりは効率が悪いです。
このように、経口補水液は水分を効率的に体内に吸収させるための工夫がされている飲み物です。
経口補水液は二日酔いの予防と改善に効果的な飲み物
ここまで、経口補水液に含まれている成分や製品の特徴について説明してきました。最初の章で説明したように、二日酔いのときは脱水と低血糖が生じています。では、これらの状態を改善することは二日酔いの改善につながるのでしょうか。
脱水と低血糖を改善すれば、二日酔いの症状は軽減する
あなたは急性アルコール中毒や二日酔いで病院を受診したことはありますか? ほとんどの人は、お酒の飲み過ぎで病院を受診したことはないと思います。
私は病院で働き始めるまでは、お酒の飲み過ぎで病院を受診すると、吐き気止めを使いまくって、無理矢理吐き気を止めると思っていました。しかし病院では、点滴による脱水の改善を行います。吐き気止めを使うことはほとんどありません。
下に、二日酔いのときに使用する点滴の成分表を載せています。経口補水液の成分表も一緒に載せていますが、含まれている成分は両者とも似ていることがわかると思います。
このような点滴を行うことで、水分、塩分、糖分(ブドウ糖)を補うことができます。
そして、この治療方法について医師に質問をすると、以下のような回答がありました。
私は病院で働いているので、お酒の飲み過ぎで病院に搬送された人が、入院になった場面を何度も見たことがあります。入院したときはぐったりしていて、動くことができる気配が全くないこともあります。しかし点滴を行うことで、点滴のあとにはまともに歩くことができるまでに回復しています。
このように、脱水や低血糖を改善することによって、二日酔いの症状はある程度改善します。
実際に経口補水液を飲んでみると、二日酔いを予防・軽減できた
経口補水液は、病院で行う点滴と同じように水分、塩分、糖分が含まれる飲み物です。
実際に私が、寝る前と朝起きた後に経口補水液を飲んでみた結果、確かに二日酔いに対して予防と軽減の効果がありました。しかし、当然の話ですが、二日酔いを完全に予防できるわけではありませんし、すぐに二日酔いが治るわけではありません。
寝る前にOS-1を500mLのペットボトルの半分(250mL)ほど飲んで寝たところ、翌日の気持ち悪さや倦怠感は、何も飲まないよりは明らかに少なかったです。
そして、朝起きて残りの半分(250mL)を飲みましたが、こちらも何も飲まないよりは体がスッキリするのが早く感じました。
このように、OS-1は二日酔いの症状の予防や改善に効果がある飲み物です。
OS-1にはペットボトルとゼリータイプがある
経口補水液で代表的なものはOS-1です。店頭ではペットボトルのタイプとゼリーのタイプが販売されています。
個人的には、ペットボトルのタイプはほぼ味がないので飲みにくいです。一方で、ゼリーのタイプの方がかすかに甘みを感じるので飲みやすいです。この味の違いは、含まれる添加物のわずかな違いによるものだと思います。
なお、どちらも含まれている糖分と塩分の量は同じなので、飲みやすい方を選べばよいです。
経口補水液はどれも含まれる成分はほぼ同じ
最も認知されている経口補水液はOS-1ですが、OS-1以外にも経口補水液はいくつも発売されています。近所のドラッグストアを何店舗か見てみると、以下の3種類がありました。
これらに含まれる成分をまとめると、下の表のようになります。なお、すべて商品100mLに含まれる成分量を記しています。
OS-1 | アクエリアス
経口補水液 |
経口補水液
NID |
|
エネルギー | 10kcal | 11kcal | 10kcal |
炭水化物 | 2.5g | 2.7g | 2.5g |
食塩相当量 | 0.292g | 0.249g | 0.254g |
カリウム | 78mg | 80mg | 78mg |
マグネシウム | 2.4mg | データなし | 2.7mg |
リン | 6.2mg | 含まれない | 6.5mg |
それぞれの成分の説明については割愛しますが、どの商品にも同じ成分がほぼ同じ量含まれていることがわかります。なお、アクエリアス経口補水液に含まれるマグネシウムについては、販売会社に問い合わせましたが、「データがありません」という回答でした。
実際に飲んでみると、OS-1と経口補水液NIDの味はほぼ同じでした。含まれる成分も成分量もほぼ同じなので、当然の結果だと思います。しょっぱさがあり、飲みやすいとは言いにくい味です。
アクエリアス経口補水液も似たような味ですが、かすかにアクエリアスの味がします。この製品だけ「すっきり柑橘フレーバー」が含まれていることも影響しているかもしれません。しょっぱさは他の2つの製品と同じようにありますが、若干飲みやすかったです。
以上のように、経口補水液にはいくつか種類がありますが、どの製品も含まれる成分はほぼ同じです。したがって、その効果もほぼ同じと考えてよいでしょう。
経口補水液の作り方
経口補水液を購入したことがある人はわかると思いますが、実は経口補水液はスポーツドリンクと比べて高価な飲み物です。
私の家の近所にあるドラッグストアで売られている金額を比べたものが、以下の表です。
OS-1 | アクエリアス | ポカリスエット | |
500mLの値段 | 205円 | 96円 | 99円 |
このように、経口補水液はスポーツドリンクと比べると2倍以上の値段です。さすがにこの金額の差は大きいと感じます。
また、いつも自宅に経口補水液があるとは限りません。
そこで、経口補水液と同じようなものを自宅で簡単に作る方法について紹介します。この作り方であれば、お金もほとんどかかりませんし、料理が全くできない私のような人でも簡単に作ることができます。
準備するものは以下の3つです
- 水(500mL)
- 砂糖(9g)
- 塩(1.5g)
砂糖と塩の量は、OS-1の成分表から私が計算したものです。なお、実際の経口補水液にはこの3種類の成分以外のものも含まれていますが、家で簡単に作れるレシピなので、この3種類だけで作ります。
実際に砂糖と塩を量りとったものが下の写真です。砂糖は大さじ1杯程度、塩は小さじ1/3程度です。
作り方は簡単で、これらを混ぜて溶かすだけです。水に砂糖と塩を入れて混ぜると、30秒ほどで全て溶けて飲めるようになります。味は甘すぎずしょっぱすぎない、なんとも言えない味です。確実に言えるのは、OS-1の方が飲みやすいということです。
このままだと飲みにくいので、レモン果汁などを少し入れると、味がついて格段に飲みやすくなります。
なお、インターネットで検索すると、砂糖と塩の量の組み合わせがいろいろ紹介されています。
このように、家庭でも経口補水液のようなものを簡単に作ることができます。しかし、この方法はどうしても飲むものがないときだけにしておいた方がよいです。
経口補水液は水分の効率的に吸収できるように緻密に設計された飲み物です。特に、食塩と砂糖の量のバランスが大切なので、手作りの場合は正確に作ることが難しいです。
また、経口補水液にはカリウムという成分も含まれています。カリウムも人間の体にとって非常に重要な成分で、大量に失われると心臓の動きに影響を及ぼすこともあります。
カリウムも塩分と同じように、脱水のときに失われる成分です。特に、嘔吐や下痢をしているときはカリウムが失われやすいです。したがって、お酒を飲みすぎたり、二日酔いになったりして、吐き気や下痢に襲われているときには、カリウムも補給する必要があります。
先ほど紹介した手作りの経口補水液には、カリウムが含まれていません。そのため、基本的には市販の経口補水液を飲む方が望ましいです。手作りの経口補水液は、緊急事態のときだけに飲むようにしましょう。
経口補水液を飲むときの注意点
経口補水液はスポーツドリンクと違って、1日当たりに飲む量の目安が定められています。
なぜこのように飲む量が決められているのでしょうか。それは、経口補水液には塩分が多く含まれているので、塩分の過剰摂取によって血圧が上昇する可能性があるためです。
厚生労働省が定める1日当たりの塩分摂取量の目標値は男性が8g未満、女性が7g未満です。ところが、実際は1日10gくらい摂取していると言われています。
このように、元々日本人は塩分の摂取量が多いです。そのため、経口補水液を飲みすぎると、塩分を過剰に摂取しすぎてしまう可能性があるので注意が必要です。脱水や体調不良のような必要時にだけ飲み、脱水ではないときには飲まないようにしましょう。
まとめ
ここでは、「経口補水液の特徴」「経口補水液が二日酔いの改善や予防にどのような効果があるか」「経口補水液を飲むときの注意点」などについて説明しました。
経口補水液は脱水のときの水分と塩分の補給に特化した飲み物です。同じような製品にスポーツドリンクがありますが、経口補水液の方がスポーツドリンクよりも効率的に水分と塩分が吸収されます。
二日酔いの症状は脱水と低血糖を改善することで軽減します。そして、経口補水液には塩分と糖分が含まれています。そのため、経口補水液を飲むことは、二日酔いの予防や、症状の改善に効果的と言えます。
経口補水液はスポーツドリンクと比べて高価な飲み物です。そこで、自宅で同じようなものを作ることはできます。しかし、それだけでは不足してしまう成分もあるので、基本的には市販の経口補水液を飲むのをお勧めします。
また、経口補水液は塩分が多く含まれているので、1日当たりの摂取量が定められています。特に、高血圧を指摘されたことがある人は、飲み過ぎに注意が必要です。