生理は女性に1ヶ月に1回起きます。激しいストレスや生活のリズムが狂うことで生理が遅れることもありますが、基本的には月に1回の周期で訪れます。

生理は痛みを伴うので、毎回憂鬱な気持ちになる人が多いでしょう。私の家内も、生理前から生理中にかけては心なしか元気がありません。

とは言っても、生理は病気ではありません。普通に生活をしていて訪れるものです。お酒に関しても、生理中にお酒を飲むことは禁止されているわけではありませんし、基本的には飲んでも問題ないです。

しかし、家内に話を聞くと「生理中にお酒を飲むと次の日は生理痛がきつい」と言っています。生理中は体の中で何が起きていて、何が原因で生理痛がひどくなっているのでしょうか。

ここでは、二日酔いが生理に対してどのような影響を与えるのかについて説明していきます。

性別によるアルコール分解の違い

当たり前の話ですが、生理は女性にだけ起きるものです。私は男なので、その痛みやストレスを感じたことはありません。

他にも女性と男性では乳房の有無、生殖器など、同じ人間ですが体の作りや機能は大きく異なっています。そしてこの違いはお酒に対する強さにも影響を及ぼします。

男性と女性ではお酒に対する強さに違いがあります。

まずは男女の体の違いがお酒の強さにどのような影響を及ぼしているかについて説明します。

肝臓の大きさの違い

まず、男性と女性では体の大きさが違います。国の調査では、20歳以上の平均体重は男性が66.8kg、女性が53.2kgと、男女で約13kgの差があります(引用:厚生労働省 国民健康・栄養調査)。そして、この体格の違いがそのまま肝臓の大きさの違いになります。

お酒は体の中に吸収されると肝臓で分解されます。アルコールが分解されると、二日酔いの原因物質のアセトアルデヒドになります。また、このアセトアルデヒドが分解されるのも肝臓です。

このように肝臓はお酒の分解においてとても重要な働きをしています。そして、肝臓は大きければ大きいほどアルコールとアセトアルデヒドの分解が速いです。

男性の方が女性よりも体が大きいので、その分だけ肝臓も大きいです。肝臓が大きい方がアルコールの分解は早く、お酒に対して強いと言えます

筋肉量の違い

前述のように、アルコールやアセトアルデヒドの分解をするのは主に肝臓です。そして、アルコールが分解してできたアセトアルデヒドは、肝臓でさらに分解されて、体にとって無害な酢酸に変わります。

酢酸は主に肝臓以外の場所で分解されて、最終的に尿として体の外に排泄されます。その分解を受ける場所が筋肉です。

筋肉量が多いと、酢酸の分解がより速く進みます。酢酸の分解が進むと、アセトアルデヒドから酢酸もスムーズに作られます。

一方で酢酸の分解が滞ってしまうと、その前の工程のアセトアルデヒドから酢酸ができるのも遅くなってしまいます。この影響が最終的にアルコールの分解の遅延に繋がってしまいます。

このように筋肉量が少ないと、アルコールの分解が遅くなってしまう傾向があります

スポーツ選手が一般の人よりもたくさんお酒を飲む話を聞いたことはないでしょうか。私は、力士が「一晩で日本酒を一升瓶で3本飲んだ」などとテレビで話しているのを聞いたことがあります。

力士の話は極端すぎますが、スポーツ選手が一般の人よりもお酒が飲めるのは体が大きいことと、筋肉量が多いことが関係しています。

そして一般的には、女性の方が男性よりも筋肉量が少ないです。35〜44歳の全身の平均筋肉量で比較すると、男性が53.6kg、女性が36.6kgであり、17kgの差があります(引用:日本老年医学会雑誌 2010,47,52)。

このように、男性の方が筋肉量が多いので、アルコールの分解をより効率的に行うことができます。

女性ホルモンの影響

女性ホルモンには、女性を女性らしくするための働きがあります。例えば、女性ホルモンは生理にも関わりますし、乳房の発達にも必要です。

女性ホルモンは男性でも分泌されますが、女性と比べると圧倒的に量が少ないです

下に血液検査での女性ホルモンの正常値を示しています。女性ホルモンは複数の種類がありますが、代表的なものがE2(エストラジオール)です。

女性は生理の周期(卵胞期、黄体期、排卵期)によって女性ホルモンの量が大きく変動します。一方、男性はほぼ変化しません。

この表を見ると、男性と比べて女性の方が正常値はなかり大きいのがわかると思います。そして、女性ホルモンには肝臓でのアルコールやアセトアルデヒドの分解を抑える効果があります

男性と女性で女性ホルモンの量が10倍以上違うことは珍しくありません。これは、女性の方がアルコールやアセトアルデヒドの分解が遅いことを意味しています。

このように、女性ホルモンの分泌量の影響で、男性よりも女性の方がアルコールの分解が遅くなってしまいます。

二日酔いが生理痛に及ぼす影響

冒頭でお話ししましたが、私の家内は二日酔いの時は生理痛がひどくなります。家内の話では、周囲の友人もお酒を飲んだ翌日は生理痛が悪化するそうです。

ここからは、なぜ二日酔いの時の生理痛がお酒を飲まない時と比べてひどくなるのかについて説明していきます。

生理痛が起きる原理

二日酔いと生理痛の話をする前に、まず生理痛がどのような原理で起きているのかについて解説します。

女性は妊娠に備えて、受精卵が入るためのベッドを子宮に準備しています。これが子宮内膜です。

子宮内膜はずっと同じものを使えるわけではなく、妊娠が成立しなかったら毎回壊して、新たに作り直しています。このときに子宮内膜が崩れたものが経血として出てきます。これが生理が起きる原理です。

子宮内膜が崩れた時に、何もしなくても経血が体の外に出るわけではありません。子宮を収縮させて、経血を押し出してやる必要があります。このときに働くのが、子宮の筋肉を収縮させる作用があるプロスタグランジンと呼ばれる物質です。

生理の時にはプロスタグランジン(子宮収縮物質)が大量に分泌されることで、子宮が収縮し、経血を押し出しています。

その一方で、プロスタグランジンは痛みの原因物質としての働きもあります

病院でよく処方される痛み止めの1つにロキソニンがあります。

ロキソニンは生理痛の薬としても使われますし、頭痛薬や腰痛の改善薬としても使用される有名な痛み止めです。そして、このロキソニンの作用は、体の中で痛み物質のプロスタグランジンができるのを抑えることによるものです。

前述の通り、生理の時はプロスタグランジンが大量に分泌されています。これは子宮を収縮させて経血を押し出すためです。

しかし、このプロスタグランジンには痛みを強くする作用もあります。プロスタグランジンが働くことで、子宮が収縮すると共に、生理痛が発生しているのです

生理中の二日酔いは生理痛を悪化させる

お酒を飲みすぎると翌日様々な症状に襲われます。私はとにかく吐き気がしんどいですが、頭痛、めまい、下痢などで苦しむ人もいるでしょう。

これらの中でも頭痛は代表的な二日酔いの症状です。二日酔いの頭痛は様々な原因で起きていますが、実はその中の1つにプロスタグランジンの量が増えることもあります。

アルコールは分解して二日酔いの原因のアセトアルデヒドになります。そしてアセトアルデヒドが溜まってくるとプロスタグランジンが増えてしまうことが知られています。その結果として頭痛が生じているのです。

そしてこれまで説明してきたように、生理中はプロスタグランジンの量が増えている状態です。そのような時に二日酔いになってしまうと、プロスタグランジンの量がさらに増えてしまいます。その結果、生理痛が余計にひどくなってしまいます

二日酔いの時の生理痛に痛み止めを飲んでもよいか

生理痛の時に痛み止めを飲むと確かに鎮痛効果は現れます。なぜなら、痛み止めの多くはプロスタグランジンができるのを抑えるためです。先ほど紹介したロキソニンもプロスタグランジンの生成を抑える薬で、生理痛に対しても汎用されています。

私の家内の話を聞くと、20代前半の頃は痛みがひどくて、痛み止めを飲んでいたそうです。そして、薬を飲まない時の痛みの強さを10とすると、薬を飲むことで5以下にはなっていたそうです。これはかなり効いていると考えていいと思います。

このように、痛み止めを飲むことは問題ありません。しかし、お酒を飲む時は鎮痛剤を飲まないようにしなければなりません。それには理由が2つあります。

まず1点目は肝機能障害です。

飲んだ薬は体の中に吸収された後に、ほとんどの場合は肝臓で分解されます。要するにアルコールが分解されるのと同じように、肝臓が関わるのです。

お酒を飲むと肝臓はアルコールの分解を頑張り、肝臓は疲れてしまいます。1回お酒を飲むだけであれば、肝臓の疲れは回復します。しかし、飲酒を繰り返すことでその疲労が肝臓に蓄積すると、肝機能障害として健康診断で引っかかります。

そして、痛み止めも同じように肝臓で分解されるので、肝機能障害をさらに悪化させる可能性があります

2点目は胃腸障害です。

「痛み止めを飲むと胃が荒れる」という話を聞いたことはないでしょうか。病院で痛み止めを処方されたことがある人であれば、一緒に飲む胃薬も処方されたことがある人もいると思います。この胃薬は痛み止めを飲んで胃が荒れるのを予防するために処方されています。

私は昔、原因不明の歯茎の痛みに襲われたことがあります。食欲もなくなってしまい、あまりご飯も食べられませんでした。この時は市販のロキソニンSを購入して、用法用量を無視して飲み続けて何とか痛みを抑えていました。

しかし、数日後に胃に違和感を感じるようになりました。病院に行くと、胃カメラで検査をすることになってしまいました。そして診断結果は、痛み止めを飲みすぎたことによる胃潰瘍でした。

この時は痛み止めを飲むのをやめて、食事を摂ることですぐに症状は改善しましたが、痛み止めによる胃腸障害が起こったのです。

このように、痛み止めの多くは胃に負担がかかり、胃腸障害が現れやすいです。

二日酔いの時は吐き気に襲われる人も多いでしょう。この時も胃が荒れています。このような時に痛み止めを飲んでしまうと、胃の回復が遅くなってしまう可能性があります

これらの肝機能障害と胃腸障害が起きる可能性については、薬の説明書である添付文書にも以下のように示されています。

このようにロキソニンは肝機能障害や胃腸障害(消化性潰瘍)がある患者さんは服用することができません。お酒を飲む時に痛み止めを飲むと、副作用が強く現れたり、元々の状態がさらに悪化したりする可能性があります。したがって、お酒を飲む前後では薬を飲んではいけません。

そして、市販薬のロキソニンSに入っている添付文書には「服用前後は飲酒しないで下さい」と明記されています。

もちろん、お酒の影響がない時間帯であれば痛み止めを飲むことは問題ありません。

これまで説明してきたように、お酒を飲むと翌日の生理痛が悪化してしまう可能性が高いです。痛み止めを飲むのを止めることは難しいと思うので、生理中はお酒を飲むのを控えた方がいいかもしれません。

まとめ

ここでは二日酔いが生理にどのような影響を及ぼすかについて説明してきました。

男性と女性で様々な体の違いがありますが、その違いがアルコールの分解に影響をしています。男性の方が肝臓は大きく、アルコールの分解を助ける筋肉量も多いので、女性よりもアルコールの分解は早いです。

また、女性は男性よりもはるかに多い量の女性ホルモンが分泌されています。そして、この女性ホルモンがアルコールやアセトアルデヒドの分解を抑制しています。

生理痛の痛みには痛み物質のプロスタグランジンが関わっています。このプロスタグランジンは二日酔いの時に量が増えることが知られています。したがって、二日酔いの時の生理痛はお酒を飲んでいない時と比べてひどくなることが多いです。

日頃から生理痛の時に痛み止めを飲んでいる人もいると思います。しかし、二日酔いの時は肝機能障害や胃腸障害などの副作用が悪化する可能性があるので、服用しないようにしましょう。