二日酔いの時は体調が悪くて、お酒のことを考えるだけでも気分が悪くなります。そんな時に飲み会の予定があると、私は「本当にこれから飲むのか」と思いながら会場に向かいます。
忘年会のシーズンでは、二日酔いの状態で夜の飲み会を迎えることも珍しくありません。しかしそんな時でも、私は普通にお酒を飲んでしまいます。
ところが、迎え酒をすると不思議なくらいお酒が飲めて、気持ち悪いのが徐々に軽減していく経験をしたことはないでしょうか。ついさっきまで何も食べる気にならなかったのが、少しずつ体が元気になってきて、食事も問題なくなります。
二日酔いの症状を改善することを目的にお酒を飲むことを「迎え酒」と言いますが、確かに迎え酒で症状は改善する気がします。では、なぜ迎え酒であの気持ち悪い状態が改善するのでしょうか。
今回は迎え酒が体にどのような影響を与えるのか、迎え酒は二日酔いの改善に効果的かについて説明します。
もくじ
迎え酒をすると吐き気や頭痛が軽減する気がする
前述のように、迎え酒をすると体調が改善した経験がある人は多いと思います。
ではなぜお酒を飲むと元気になってくるのでしょうか。それは、お酒を飲むと脳が麻痺をして、吐き気や痛みを感じにくくなるからです。
お酒を飲んで酔っ払うことで、いろいろな感覚が鈍くなります。
朝起きてなぜか手足が痛かった経験はないでしょうか。そこで周囲の人に聞いてみると、酔っ払って自転車で転んでいたり、机の角に足をぶつけていたりしています。
ぶつけた時は酔っ払っているので痛みが感じにくくなっていますが、お酒が抜けた後に痛みを感じているのです。
他にも、運動能力が低下して千鳥足になったり、記憶がなくなったりするのも脳が麻痺する影響です。
このように酔っ払うと感覚が鈍くなり、辛い症状が改善したような気になります。しかし、これは脳が麻痺しているだけで、決して症状自体が改善しているわけではありません。
迎え酒は二日酔いに対して最悪
迎え酒をすると一時的に元気になるので、迎え酒を繰り返している人もいるかもしれません。
しかし、迎え酒を二日酔いの時にするのは最悪な選択です。
その理由については少し考えればわかると思います。それは、前日に飲んだお酒のダメージが回復しないうちにお酒を飲むことで、二日酔いからの回復が遅くなるからです。
続いて、迎え酒によって具体的にどのような悪影響が現れるかについて説明します。
脱水状態が悪化する
二日酔いのとき、体は脱水状態になっています。これはお酒に含まれるアルコールによる影響です。
アルコールには尿量を増やす利尿作用があります。ビールを1000mL飲むと1100mLの尿が出るという報告もあります。つまり、お酒を飲めば飲むほど脱水は悪化します。
引用:大塚製薬ホームページより
このように、脱水状態の時にお酒を飲むと脱水が更に酷くなる恐れがあります。
肝臓ガンになる可能性がある
毎日お酒を飲んでいる人は、健康診断で肝機能の異常を指摘されたことがある人もいると思います。
お酒を飲むと肝臓で分解されます。お酒を飲みすぎると肝臓が痛んでしまい、肝機能の悪化に繋がってしまいます。
二日酔いの時は、前日に飲んだアルコールやアセトアルデヒドを分解した結果、肝臓が疲弊している状態です。そのような時にさらにアルコールを飲むと、肝臓は休むことができません。
肝臓の機能が回復する前にお酒を飲むと、肝臓の機能はどんどん悪化していきます。最悪の場合、肝硬変になってしまい、さらに進行すると肝臓ガンに繋がります。
肝臓は「沈黙の臓器」とも言われており、肝機能が低下しても痛みを感じるなどの自覚症状が現れることはほとんどありません。そのため、気付いた時には肝機能障害がかなり進行していることもあります。肝臓を労わるためにも、迎え酒は控えるようにしましょう。
胃腸障害が悪化する
私は二日酔いの時、吐き気が一番しんどいです。お酒はもちろんですが、ご飯を食べるのも苦痛です。
アルコールには刺激性があるので、お酒を飲んだ翌日は胃の壁が痛んでいます。また、胃の中だけでなく、食道も炎症を起こしています。特に嘔吐をしていると、胃酸が食道を傷つけていて、逆流性食道炎という病気になっていることもあります。
二日酔いの時に迎え酒をすると、刺激物のアルコールが更に刺激を与えてしまい、炎症が悪化する恐れがあります。
このように二日酔いの時にアルコールを飲むと、吐き気の回復が遅くなるのは明らかです。
アルコール依存症に陥る可能性
迎え酒をすると一時的に二日酔いの症状が軽減した気になるので、習慣化してしまう人がいます。これはアルコール依存になっている可能性があるので要注意です。
アルコール依存は、アルコールが体内から抜けた時に強いストレスを感じてしまい、アルコールが抜けないようにお酒を飲み続けてしまう状態です。
迎え酒をすると一時的に体が元気になったような錯覚に陥るので、迎え酒を繰り返してしまうのはまさにアルコール依存の状態です。
アルコール依存になると立ち直るにはかなりのエネルギーが必要です。
私の知り合いの医師の話では、アルコール依存から立ち直るには1)本人、2)家族、3)医師の全ての努力が必要と言っていました。本人だけの意思では難しいので、周囲の人の協力が必要になってきます。ひどい場合は専門の病院に入院するような患者さんもいます。
このように、迎え酒を繰り返すとアルコール依存になる可能性があるので注意が必要です。
迎え酒は二日酔いの改善に効果的?
ここまで、迎え酒がいかに体に負担がかかるかについて説明してきました。その一方で、迎え酒が二日酔いの改善に効果的という噂を聞いたことがある人もいると思います。
この噂の根拠は何なのでしょうか。それにはお酒の成分のエタノールと類似しているメタノールが関係していると言われています。
メタノールはあらゆるお酒にごく微量に含まれています。中でも、ブランデーのようにアルコール度数が高いお酒に多く含まれているといわれています。
メタノールは体内で分解されるとホルムアルデヒドという物質になります。このホルムアルデヒドは毒性が強い物質で、二日酔いの原因の1つと言われています。
そしてメタノールの特徴として、エタノールよりも分解に時間がかかることが挙げられます。メタノールの分解は、エタノールの分解が終わってから始まるとも言われています。
体内にメタノールがある状態で迎え酒をするとどうなるでしょうか。それは、メタノールよりも先にエタノールが分解されるので、メタノールからホルムアルデヒドが生成するのが更に遅くなるのです。その結果、二日酔いの症状の悪化を防ぐことができるという仮説です。
しかし、これはあくまで仮説であり、実際に証明されているわけではありません。また、結局はお酒を飲むことで新たな二日酔いの原因を作り出しているだけのように思います。
このように、迎え酒にはメリットがあるように思われますが、デメリットの方がはるかに大きいと思います。やはり迎え酒は控えた方がよさそうです。
まとめ
迎え酒が二日酔いの症状改善に効果的かについて説明してきました。
迎え酒をすると一時的に症状が改善するような気がしますが、根本的には何も解決していません。迎え酒によって脳の機能が麻痺し、二日酔いの苦痛を感じにくくなっているだけです。
迎え酒は脱水や胃腸障害を更に悪化させてしまい、結果的に二日酔いの回復を遅くしてしまいます。
また、迎え酒を繰り返すことで、肝機能が悪化したり、アルコール依存になってしまったりする可能性もあります。
迎え酒が効果的という仮説もありますが、あまりお勧めできるものではありません。
迎え酒ではなく、脱水の改善のためにスポーツドリンクを飲む、肝機能を改善するような食事やサプリメントの摂取をするなどして、二日酔いの軽減を図るようにしましょう。