朝起きて二日酔いだったときは、頭痛や吐き気に襲われて、なかなか起き上がることができません。仕事がない日であれば、そのまま昼まで横になっていることもあると思います。

このようなときに、「どの体勢が楽か」ということを考えたことがある人は多いと思います。

私は起きて二日酔いだったときは、どの体勢が楽かを考えて、布団の中でゴロゴロしてしまいます。

ここでは、「お酒を飲んだあとや二日酔いのときに、どのような体勢をとるとよいか」「お酒を飲みすぎて吐き気があるときに、どのような姿勢で睡眠をとるのがよいか」などについて説明していきます。

二日酔いのときはどのような体勢がよいか

お酒を飲みすぎたときや気持ち悪いときは、体を起こしておくのはしんどいです。したがって、基本的には横になると思います。

二日酔いを治すような体勢や、二日酔いを予防するような寝方や体勢はありません。しかし、少しでも安全な寝方や体勢はあります。

続いて、体勢によって、吐き気などにどのような影響が現れるかについて説明します。

体の右側を下にする体勢が安全

食べ物や飲み物を飲み込むと、食道を通って胃に入ります。そして、胃の形は左右対称ではなく、自分から見て右側に腸につながる出口があります。

このため、体の右側を下にして横になることで、胃の内容物を出口付近に寄せることができます。そうすることで、少しでも内容物が逆流をしにくくすることができます

そして、胃の出口の先は腸に繋がっていますが、基本的には出口は閉じています。胃の内容物が胃液で消化されて、腸に移動しても問題ない状態になると出口が開いて、胃で消化されたものが腸に移動します。

したがって、右側を下にして横になっても、すぐに内容物が胃から腸に移動するわけではありません。この姿勢をとったとしても、嘔吐が起きる可能性はあるので注意が必要です。

仰向けは、窒息と睡眠時無呼吸症候群が起きやすい寝方

夜寝るときは仰向けで寝る人がほとんどだと思います。通常時は仰向けで寝ても全く問題はありません。ただし、お酒を飲みすぎて吐き気に襲われているときは、仰向けは避けた方がよい寝方です。

その理由は、嘔吐したときに、吐いたものが喉に詰まって、窒息する可能性があるからです。

引用:NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)を一部改変

嘔吐が起きても嘔吐物が喉に詰まらないようにするためには、顔を横に向けておくのが効果的です。なぜなら、顔を横にすることで、嘔吐物が口の外に出やすくなるためです。

先ほど説明したように、体の右側を下にすると顔も横を向くので、嘔吐物による窒息を避けることができます。

私が働いている病院の医師に話を聞くと、以下のように話してくれました。

お酒を飲みすぎて吐いている人を診るときに注意しないといけないのは、嘔吐したものが気道に詰まることによる窒息です。

もし、患者さんが吐いていれば、我慢はさせずに、全部吐いてもらいます。全部吐いた方が、固形のものが気道を塞ぐ可能性が下がります。

また、吐いたものが喉に詰まるといけないので、仰向けにならないように、時々様子を見るようにしています。

通常であれば、何かが喉に詰まっても、咳をして吐き出すことができます。しかし、二日酔いのときやお酒を飲みすぎたときは、脳の活動が鈍くなっており、咳が起きにくくなっています。その結果、吐いた物が喉に詰まってしまい、窒息してしまう可能性があるのです。

このように、嘔吐したものによる窒息は、命の危険につながることがあるので注意する必要があります

また、仰向けを避けた方がよいもう1つの理由があります。それは、睡眠時無呼吸症候群が起きやすくなるためです。

アルコールを飲むと脳に作用して、運動能力を低下させます。具体的には、脳の中でも運動に関わる小脳を麻痺させてしまいます。

お酒を飲みすぎて道端で横たわってしまったり、千鳥足になったりするのは、アルコールが小脳を麻痺させて、運動に関わる筋力を低下させてしまうためです。

そして、この筋力の低下は手足だけでなく、喉の筋肉にも起きてしまいます。

喉の筋力が低下すると、舌が垂れてきて、空気の通り道の気道を塞いでしまいます

お酒を飲んだ後に寝ると、普段よりもいびきがうるさくなることはないでしょうか。これは、気道が狭くなってしまっていることが原因です。

空気の通りが悪くなると、いびきがうるさくなったり、一時的に呼吸が止まったりすることもあります。この呼吸が止まる状態が睡眠時無呼吸症候群と呼ばれます。

引用:NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)

睡眠時無呼吸症候群は、一般的には肥満の人に多いと言われています。肥満の人は、脂肪が原因で気道が狭くなっています。その結果、呼吸が一時的に止まってしまうのです。

睡眠時無呼吸症候群になると熟睡できないので、疲れがとれにくいです。そのため、翌日の仕事の効率が低下したり、日中に異常な眠気に襲われたりします。

そして、睡眠時無呼吸症候群を避ける方法の1つに、体を横向きにして眠ることがあります。体を横にして眠ることで、舌が気道を塞いでしまうのを避けることができます

うつ伏せは胸が圧迫されて、呼吸が苦しくなる

私はお酒の飲み過ぎたときに布団の中でゴロゴロしていると、一時的にうつ伏せになることがあります。最初は少し楽になったような気がしますが、すぐに胸が圧迫されて、呼吸をするのがしんどくなります。

特に二日酔いのような状態で、胸が圧迫されたままの姿勢を長時間維持するのは難しいです。

このように、二日酔いのように吐き気を感じているとき、うつ伏せは体の負担が大きいので避けたほうがよいでしょう

吐き気を軽減するためには、体を起こしておくのが最もよい

お酒を飲みすぎたときや、二日酔いのときに、どのような体勢でいるのがよいかについて説明してきました。もちろんですが、このように体調が悪いときは、少しでも長く横になっていたいものです。仕事がない日であれば、昼寝をして体力を回復させようとする人もいると思います。

しかし、嘔吐や胃液の逆流が心配な状態であれば、最もよい体勢は体を起こしておくことです。その理由は、重力によって胃の内容物が逆流しにくくなるためです

体を起こしておくと胃の内容物は、重力の影響を受けて、胃の下の方に溜まっています。しかし、横になることで胃の内容物は、胃の下部に押し付けられている重力の影響を受けにくくなり、内容物が胃の上部に移動します。その結果、横になっている方が内容物が逆流しやすくなってしまいます。

私はお酒を飲んでいるときはあまり感じないのですが、横になると吐き気が急に現れることがあります。これも体を横にした影響と言えます。

このように、体を起こしておくことで、嘔吐や、嘔吐による窒息のリスクを少しでも減らすことができます

起きているよりも眠っている方がアルコールの分解は遅くなる

私はお酒を飲んだあとは眠気に襲われるので、すぐに布団に入って寝てしまいます。実は、アルコールの分解という点において、この行為はよくありません。それは、眠ることでアルコールの分解速度が遅くなるためです。

札幌医科大学の松本教授らは、起きているよりも眠っている方がアルコールの分解速度が遅くなることを明らかにしています。

引用:Jpn. J. Alcohol & Drug Dependence 2011,46,146

しかし、現実的には、お酒を飲みすぎたらすぐ寝たいですし、二日酔いのときも起きるのではなくて寝続けたいと思います。アルコールを早く分解するだけのためにずっと起きておくのは、疲労回復という意味では逆効果になります。

そこで、お酒を飲み過ぎたあとはすぐには横にならないで、少しだけでも起きておくことをお勧めします。歯磨きをしたり、短時間でシャワーを浴びたりすることで、すぐには寝ないようにするとよいです。

二日酔いのときも、可能であれば起きておいた方がアルコールは早く分解されます。

例えば、朝起きて何か食べて、すぐに横になるのはよくありません。体がだるいと思うので、また横になりたい気持ちはよくわかります。しかし、横になっていると、気がついたら眠っていることは多いと思います。

しかし、アルコールが体に残っているのであれば、そのまま体を起こしておいた方がよいです。その方が、アルコールが早く分解されますし、横になったことによる内容物の逆流を防止できます。

二日酔いのときやお酒を飲みすぎたときは、睡眠をとることで体力は回復できます。しかし、少しでも早くアルコールを分解したいのであれば、眠らないで体を起こしておく方法は効果的です。

下を見て細かい作業をすると吐き気が悪化する

二日酔いのときに、どうしても仕事をしなければならない場面はあります。このようなときは、少しでも下を見て作業する時間を避けるようにした方がよいです

私は薬剤師として働いています。薬剤師の仕事の1つに「監査」という業務があります。これはほかの薬剤師が準備した薬が正しく準備できているかをチェックする仕事です。

患者さんの中には、高齢者のように多くの薬を飲んでいる人もいます。そのような場合は、薬局で薬を袋に入れる「一包化」という作業をします。下に一包化された薬の写真を載せています。

監査では、この袋の中に入っている薬が正しいかどうかを、錠剤の色、大きさ、錠剤に彫られた文字を見て判断しなければなりません。これはかなり集中力が必要な業務です。

以前私は、二日酔いのときに監査をしていて、徐々に気持ち悪くなっていくのを感じました。そのときに、下を見ながらではなく、薬を持ち上げて、やや上を見ながら監査をすると吐き気が大幅に軽減しました。私の周囲の人に聞いてみても、同じような経験をしたことがある人は多いです。

このように、二日酔いのときに下を見たまま作業をしていると、気持ち悪くなることがあります。二日酔いのときは、下を見る時間を減らすことで、吐き気が悪化するのを軽減できます

まとめ

ここでは、「お酒を飲んだあとや二日酔いのときに、どのような体勢をとるとよいか」「お酒を飲みすぎて吐き気があるときに、どのような姿勢で睡眠をとるのがよいか」について説明してきました。

横になるのであれば、体の右側を下にするのがよいです。仰向けは嘔吐物が喉に詰まってしまい、窒息する危険があります。また、うつ伏せは胸が圧迫されることで呼吸が苦しくなってしまいます。

眠るときも、特に仰向けは、嘔吐物による窒息や睡眠時無呼吸症候群が起きやすい寝方なので避けた方がよいです。

そして、もし体を起こしておくことができるのであれば、横にならない方がより安全です。体を起こしておくと、重力で胃の内容物が下に溜まるので、逆流しにくくなります。

しかし、お酒を飲みすぎたり二日酔いになったりすると、同じ体勢を維持するのはなかなか大変です。実際に私も、頻繁に体勢を変えてしまいます。

二日酔いのときやお酒を飲みすぎたときは、少しでも今回紹介した姿勢をとることで、嘔吐や、それに伴う窒息のリスクを下げるようにしましょう。