私は朝起きて二日酔いだったときは「このしんどさを早く治したい」と思います。これは二日酔いになったら誰もが思うことでしょう。

しかし、二日酔いの特効薬はないので、なかなか症状は改善しません。そのため、私は「このしんどさは永遠に続くのではないか」「二日酔い以外に変な病気になってしまっているのではないか」と感じるようになります。

実際は、永遠にしんどさが続くことはなく、ほとんどの場合はその日のうちにある程度元気になります。朝の時点で嘔吐をしていたり、激しい頭痛に襲われたりしていても、夕方にはある程度回復することがほとんどです。

しかし、二日酔いの症状がなかなか治らなかったら、別の病気を疑う必要があります。実はその病気の中には、放っておくと重症化するものもあります。

ここでは、二日酔いの症状が改善しないときに疑われる病気について説明していきます。

二日酔いは長くは続かない

二日酔いになったときは「この苦しさはいつまで続くのだろうか」と感じますが、ほとんどの場合はその日のうちにある程度回復します。二日酔いの日は「体がだるい」「ご飯を食べると胃もたれがする」「起き上がると少しめまいがする」という状態になりますが、このような症状が三日目、四日目まで残ることはほぼありません。

また、知り合いの何人かの医師に質問をしても、皆口をそろえて「二日酔いの症状が何日も続くことはない」と言っていました。

私が人生で最大の二日酔いになったときは、日曜日にお酒を飲みすぎて、そのダメージが3日後の水曜日まで残っていました。いわゆる三日酔い、四日酔いの状態でした。火曜日までほぼ食事は食べることができず、かなりしんどい思いをしました。

アルコールや胃液によって胃や食道が荒れても、数日で回復する

あなたは、病院やデパートの入り口で手の消毒をしたことはありますか? このときに手に怪我をしていると、アルコールが傷口を刺激して激痛が走ります。これはアルコールに刺激性があるためです。私は病院で働いているので、怪我をしているのを忘れて、いつも通り消毒をしてしまい、苦しんだ経験が何度もあります。

アルコールを飲み込んで胃に入ると、アルコールが胃を刺激します。そして、アルコールの摂取量が増えると、アルコール自体の刺激によって胃が痛んでしまいます。

また、二日酔いになると吐き気がして、胃がムカムカします。症状がひどい場合は嘔吐することもあります。このとき、胃の中の内容物が逆流しますが、同時に胃液も逆流します。

なお、胃液は刺激が強いので、胃の壁は胃液からの刺激を防ぐための構造になっています。その一方で、食道の壁は胃液に対して無防備なので、胃液が付くと刺激を受けてしまいます。その結果、食道の表面は傷ついてしまいます。

このように、アルコールが胃を刺激したり、胃液によって食道が傷ついたりすると、すぐには治りません。場合によっては何日かその影響が残ることがあります。

しかし、アルコールなどによって胃や食道が傷ついたとしても、基本的には何もしなくてもよくなります。過去の私のように、激しい二日酔いになったとしても、3日目、4日目になれば自然と回復します。

二日酔いに似た症状の病気がある

二日酔いになるといろいろな症状が現れます。そして、基本的にはその日のうちに症状は改善します。さらに翌日まで症状が続くことは稀だと思います。

しかし、お酒を飲んでないのに二日酔いの症状が続くようであれば、別の病気になっている可能性があります。そのまま放っておくと大きな問題になることもあるので注意が必要です。

急性胃腸炎

私の場合は、お酒を飲みすぎた翌日は必ず吐き気に襲われます。また、翌日はほぼ下痢になります。ひどい二日酔いに襲われるときは、下痢のために腹痛も伴います。

実はこれらの症状は「急性胃腸炎」と症状が似ています。急性胃腸炎になると吐き気、腹痛、下痢の症状が現れます。

しかし、急性胃腸炎と二日酔いの症状は似ていますが、原因は異なります。

二日酔いの原因はアルコールの飲み過ぎです。お酒を飲まなければ二日酔いにはなりません。一方で、急性胃腸炎の原因は細菌やウイルスです。

このように原因は異なりますが、症状だけでどちらの病気になっているかを判別するのは難しいです。

二日酔いになった経験がある人はわかると思いますが、二日酔いは基本的にその日のうちに症状が治まります。

しかし、急性胃腸炎の場合はそこまで早く症状が回復することはありません。早ければ1〜2日で症状のピークを超えますが、長いと1週間くらい続くこともあります

症状 期間
二日酔い 吐き気、腹痛、下痢 1日程度
急性胃腸炎 吐き気、腹痛、下痢 1日〜1週間

私が働いている病院でも急性胃腸炎で外来にこられて、そのまま入院になる患者さんもいます。その場合は、抗生剤による治療を受けることが多いです。

急性胃腸炎の場合は、早めに病院を受診する方がよいです。急性胃腸炎は、我慢をしていても、症状は徐々に回復してくるかもしれません。しかし、その間はかなりしんどい思いをすることになります。

急性すい炎

私はお酒を飲みすぎると翌日に下痢になることが多いです。そしてそのときは、だいたいお腹の痛みにも襲われます。

下痢になったときに、トイレに行って便をすると、腹痛がある程度軽減するのを感じます。腹痛が一日中続くことはありません。

しかし、腹痛が続く場合は、単なる下痢ではなく、すい臓が炎症を起こしている可能性があります。この状態を医学的には「急性すい炎」と呼びます。

急性すい炎による腹痛と下痢による腹痛には、はっきりとした違いがあります。それは、痛む場所です。

急性すい炎の場合は、みぞおちの辺りが痛くなります。その一方で、下痢による腹痛の場合は、下腹部が痛くなります

すい臓で炎症が起きると、すい臓に含まれているものが溶け出してしまい、全身を回るようになります。このすい臓に含まれているものは、食べ物を消化するための消化酵素と呼ばれるものです。

消化酵素は、本来は食べ物を消化・分解するためのものですが、体を回ることで、いろいろなものに対して作用してしまいます。その結果、全身に炎症が起きるなどの問題が起きます

このように急性すい炎は、放っておくと全身に影響が出てしまい、重症化する可能性がある病気です。

うつ病

あなたはうつ病になったことがあるでしょうか。私は病院で勤務しているので、うつ病の患者さんと話をする機会があります。また、病院の職員の中にもうつ病の薬を飲んでいる人はいます。

うつ病にはさまざまな症状が現れますが、その症状は個人差がかなりあります

私も人間関係が原因で、一度だけうつ病になったことがあります。そのときは激しい動悸と吐き気に襲われました。これらの症状のために夜は全く寝られず、日中もふらふらの状態でした。

実は、うつ病の症状は二日酔いの症状と似ています。二日酔いのときは動悸が起きることがありますし、吐き気にも襲われます。他にも下の図で示すように、二日酔いとうつには共通の症状がいくつもあります

私は二日酔いになったときには、何もやる気にならなかったり(無気力)、こんなことをやっていて大丈夫だろうか(不安感)という気持ちになったりします。私の場合はその日のうちにこのような気持ちは楽になりますが、もし長引くようであればうつ病の症状が出ているかもしれません。

続いて、お酒とうつ病の関係について詳しく説明します。

・お酒を飲むと幸福ホルモンの量が減る

うつ病には様々な要因が関わっています。その中の1つに、幸福ホルモンと呼ばれているセロトニンが減少することがあります。

お酒を飲むと、セロトニンの原料となる物質の量が減ってしまうことがわかっています。その結果、セロトニンの量が減ってしまい、うつ症状が現れてしまいます。

実際にうつ病を治療するときに使われる薬の中には、セロトニンの量を増やす薬があります。例えば、ジェイゾロフト、サインバルタ、パキシルなどの薬は、セロトニンの量を増やすことで、うつ症状を軽減する薬です。

このように、アルコールを摂取することでセロトニンが減ってしまい、うつ症状が現れることがあります。

・お酒を飲むと睡眠のリズムが狂う

寝つきをよくする目的でお酒を飲んでいる人がいると思います。私の周りにも、「晩酌をするのは寝るため」という人はいます。

しかし実は、お酒を飲むと、睡眠のリズムが乱れてしまうことを知っているでしょうか。

正常な睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と、浅い眠りの「レム睡眠」が周期的に繰り返されます。お酒を飲むと、この睡眠のリズムが乱れてしまいます

正常な睡眠とお酒を飲んだときの睡眠の違いを、下の図で示します。具体的な違いは、眠り始めはお酒を飲むとレム睡眠の時間が短くなります。その一方で、時間が経つと目が覚めやすくなります。

引用:アルコールを飲んでも睡眠を阻害しない2つの方法(一部改変)

お酒を飲んで睡眠のリズムが狂ってしまうと、夜中に目が覚めてしまい、疲れが十分とれないことがあります。私はお酒を飲んで寝ると、必ず1回は夜中に目が覚めます。二度寝をしますが、朝起きたときは「睡眠が足りてないなあ」と感じます。

また、私はかつてうつ病になったときに、心療内科に通院しました。そのときに診察してもらった医師に以下のように言われました。

まずはしっかりと睡眠をとるようにしましょう。睡眠がとれないと体がしんどくなります。体がしんどくなると思考もネガティブになってしまいます。

これを繰り返すことで、どんどん心も体もしんどくなってしまうので、まずは夜寝られるように、薬を飲んでみましょう。

このときは睡眠導入剤を処方されて、よく寝ることができました。体力は回復し、精神的にもかなり楽になったのを覚えています。

このように睡眠が不足すると、うつ症状が現れることがあります

お酒を飲むと睡眠のリズムが狂います。その結果、体の疲労が十分に回復せず、さらに精神面がやられてしまうことがあるので注意が必要です。

・お酒を飲むと、睡眠のリズムを整えるメラトニンの量が減る

実は、お酒を飲むことで、睡眠のリズムを整える物質の量が減ることがわかっています。その物質はメラトニンと呼ばれる物質です。

先ほど、お酒を飲むと幸福ホルモンのセロトニンが減ることを説明しました。そして、睡眠のリズムを整えるメラトニンはセロトニンを原料として作られています。

飲酒によってセロトニンが減ると、メラトニンの量も減ってしまいます。そのため、睡眠のリズムが狂ってしまい、睡眠が十分に確保できなくなることもあります

メラトニンの作用を強くする薬でロゼレムという薬があります。この薬は、特に時差ボケのように睡眠のリズムが乱れている人に効果的と言われており、病院で処方されています。

ここまで説明してきたように、お酒を飲むと、精神面にも影響が出ることがあります。その原因は幸福ホルモンのセロトニン量の減少、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムの乱れ、睡眠のリズムを整えるメラトニンの量の減少などがあります。

二日酔いの症状はその日のうちによくなります。なかなか症状が抜けないようであれば、うつ病になっている可能性があるので注意が必要です

便に血が混ざっている場合は、大腸がんの可能性がある

私の知り合いに、大量にお酒を飲んだあとに痔になって、病院に通院したことがある人がいます。その人は病院で処方された薬を使用することで症状は改善したと言っていました。

肛門に痛みがあったり、使ったトイレットペーパーに血が付いたり、便に血が混ざったりしていると、痔になっている可能性が高いです。

便に血が混ざっているようであれば、体の中のどこからか出血しています。普通は便に血が混ざることはありません。

そして、便に血が混ざっていると、もしかしたら大腸がんになっている可能性もあります

私が働いている病院でも、便に血が混ざっているということで病院を受診し、検査をしてみると大腸がんだったという患者さんを何人も知っています。このようなケースは高齢者がほとんどですが、出血が続くようであれば、若い人でも大腸がんになっている可能性はあります

大腸がんは、お酒を大量に飲んで急になる病気ではありません。しかし、便に血が混ざるような状態が続くようであれば、一度病院を受診したほうがよいでしょう。

病気ではなく、基礎代謝が下がることで二日酔いが長引くようになる

昔はお酒が飲めたのに、最近はあまり飲めないし、二日酔いもひどくなっているという話を聞いたことはないでしょうか。私の周りにはこのようなことを言っている人が多いです。

この理由について知り合いの医師に質問をすると、以下のような返答でした。

自分も昔はお酒が飲めたけど、今は二日酔いになりやすくなっている。これの原因は代謝が落ちたから。肝臓の機能は正常なままでも、基礎代謝が落ちると、アルコールや二日酔いの原因物質の1つのアセトアルデヒドの分解が遅くなる。

昔と同じような食事をしてもお腹に贅肉がつきやすかったり、なかなか体重が落ちなかったりしないでしょうか。これらも加齢とともに基礎代謝が低下していることが原因です。

実際に基礎代謝は、10代がピークで、そこからは加齢とともに徐々に低下していきます。基礎代謝について、厚生労働省の報告書の内容を以下のグラフで示します。年齢とともに徐々に基礎代謝が低下するのがわかると思います。

引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書の内容より作成

このように、基礎代謝が低下すると、アルコールやアセトアルデヒドの分解が遅くなるので、二日酔いになりやすくなります

二日酔いが長引く場合は、必ず別の病気になっているとは限りません。若い頃と比べて基礎代謝の落ちていることも影響しているので、病気かどうかは慎重に見極める必要があります。

まとめ

ここでは、二日酔いの症状が改善しないときに疑われる病気について解説しました。

二日酔いは基本的にはその日のうちに症状が改善します。しかし、何日も症状が続くようであれば他の病気を疑う必要があります。

二日酔いと症状が似ている病気に急性胃腸炎、急性すい炎、うつ病などがあります。また、便に血が混ざるようであれば、可能性は低いですが大腸がんになっているかもしれません。

したがって、二日酔いの症状が長引くようであれば病院を受診した方がよいでしょう。

また、年齢とともに基礎代謝が落ちるので、二日酔いにはなりやすくなります。「二日酔いが長引く=別の病気」ではないので、慎重に見極めるようにしましょう。

二日酔いは原因が明らかであり、それはお酒の飲み過ぎです。そのため、二日酔いを避けるためには、お酒を飲みすぎないように工夫したり、二日酔いになりにくくする工夫(サプリメントを摂取するなど)をしたりするようにしなければなりません。