二日酔いの症状のなかでどの症状が一番辛いでしょうか。私の場合はとにかく吐き気です。私は二日酔いで頭痛やめまいが起きることは稀ですが、吐き気は毎回必ず起きます。
二日酔いのときは胃の中はほぼ空の状態です。吐くものがないにも関わらず吐き気に襲われます。このようなときはどうするのがよいでしょうか。
ここでは二日酔いのときの吐き気に対してどう対処するのがよいかについて説明していきます。
もくじ
なぜお酒を飲むと気持ち悪くなるのか
普通に生活をしていて嘔吐をすることはまずありません。食事を食べすぎても吐くことはほとんどないでしょう。
しかしお酒を飲みすぎると吐き気に襲われます。我慢できずに嘔吐してしまうこともあります。では、なぜお酒を飲みすぎると吐くのでしょうか。
まずは、お酒に含まれる吐き気の原因物質と、なぜお酒を飲みすぎると気持ち悪くなるのかについて説明します。
・エタノール
お酒にはアルコールが含まれますが、その主成分は「エタノール」と呼ばれます。
お酒を飲み続けていると、エタノールが体内に吸収されて、血液中のエタノール濃度が上がります。お酒の量が少ないうちはほろ酔いで気持ちいいですが、ある時を境に気持ち悪さを感じるようになります。
吐き気を感じてもそのままエタノールを摂取し続けると泥酔状態となり、最悪の場合は死に至ることもあります。
また、エタノール自体にも刺激性があるので、胃を直接刺激することによる吐き気が起きることがあります。
このように、エタノールは少量の摂取であれば気分が高揚しますが、飲みすぎると吐き気の原因となる物質です。
・アセトアルデヒド
エタノールは体内に入ると肝臓で分解されます。分解されて最初にできるのが、二日酔いの原因物質のアセトアルデヒドです。
アセトアルデヒドが体内に蓄積すると、吐き気を感じるようになります。なお、アセトアルデヒドはエタノールよりも毒性があるといわれています。
アセトアルデヒドは吐き気以外にも頭痛や動悸の原因物質でもあり、二日酔いに大きく関わっている物質です。
・コンジナー
お酒の種類によって吐き気が起きやすいお酒と起きにくいお酒があります。それを決めるのは、お酒に含まれる「コンジナー」と呼ばれる不純物の量です。
コンジナーが多く含まれるお酒を飲むと翌日の二日酔いになりやすいです。
さまざまな種類のお酒が作られていますが、お酒は醸造酒と蒸留酒に分けることができます。醸造酒は原料を発酵させて作ったお酒で、蒸留酒は醸造酒を加熱・精製(この工程を精製と呼ぶ)させて作ったお酒です。
これらのうち、コンジナーの量が少ないのは蒸留酒です。なぜなら、蒸留酒の方が醸造酒よりも精製の工程が多く、不純物が除去されているからです。
不純物が多いかどうかの判断基準の一つは、お酒の濁り具合です。下に醸造酒のワイン(左)と蒸留酒のブランデー(右)の写真を載せています。ワインの方が不純物は多いので濁っているのがわかると思います。
醸造酒にはワイン以外にもビール、日本酒などが含まれます。これらのお酒を飲む時にはコンジナーによる二日酔いに注意が必要です。
入浴が吐き気の原因になることもある
お風呂に入ると体が温まります。その結果、血流がよくなり、代謝が上がります。お風呂から出た後に汗が噴き出すのはこのためです。
代謝がよくなることで、アルコールが全身を急速に回るようになり、急に気持ち悪くなって嘔吐してしまうことがあります。
私の友人は赤ワインを大量に飲んだ後にお風呂に入り、急な嘔吐に襲われて病院に運ばれたことがあります。このようにお風呂に入る前は吐き気がなくても、お風呂に入ると急に嘔吐が起きることがあります。
また、お酒を飲んだ後にお風呂に入って、出る頃に酔いが回ってふらふらになった経験をしたことがある人もいるでしょう。この状態も、代謝が上がったことによる影響が出ています。
お酒を飲んだ後の入浴は避けたほうがいいです。どうしても汗を流したい場合は、ぬるめのお湯にするか、短時間のシャワーを浴びるのがよいでしょう。
このように、急激に血流がよくなると吐き気が起きる可能性がありるので注意が必要です。
嘔吐した方がいい?我慢した方がいい?
お酒を飲んでいるときや朝目覚めたときに吐き気に襲われた場合、「吐いてしまった方が楽になるのでは」と考えたことがある人は多いでしょう。戻すのはしんどいので、そのまま我慢する人も多いでしょう。
このような時は吐いてしまった方がいいでしょうか。それとも我慢した方がいいでしょうか。
我慢は不要
吐き気が限界に達しているときは吐いてしまいましょう。
嘔吐は体が異物を体内から除去するための大切な反応です。例えば、食中毒による嘔吐は、体から食中毒の原因の毒素を除去するために起きます。
お酒を飲みすぎたときや二日酔いのときの吐き気は、エタノールやアセトアルデヒドなどが体内に溜まり過ぎたために起きます。我慢しすぎると体内にこれらの物質が溜まりすぎて、急性アルコール中毒やさらなる体調の悪化に繋がる可能性があります。
また、気持ち悪い状態で無理矢理寝ると、寝ている間に嘔吐をしてしまい、嘔吐物が詰まって窒息する危険性もあります。最悪の事態を避けるために、寝る前に吐くのも一つの選択肢です。
このように嘔吐は人間が生きていく上でとても大切な反応です。我慢のし過ぎはよくありません。
嘔吐することによる問題点
吐き気は我慢しなくてもいいですが、もちろん吐かないに越したことはありません。
通常、口から摂取したものは「食道→胃→十二指腸→小腸→大腸」と移動して、最終的に肛門から排泄されます。嘔吐をすると、この流れとは逆の動きになります。
当然人間の体は逆の流れは想定していないので、嘔吐をすると体に大きな負担がかかってしまいます。具体的には以下の問題が生じます。
・胃液の逆流
胃液は胃の壁から分泌される液体で、かなり特殊な液体です。胃液には胃酸と呼ばれる酸性の成分が含まれており、この成分によって食べ物がドロドロに消化されます。
身近なもので酸性の液体に「お酢」があります。お酢をそのまま飲むとかなり酸っぱいです。
胃液が逆流してくると「酸っぱいものが上がってくる」という感覚があると思います。これは胃液がお酢と一緒で酸性だからです。なお、お酢よりも胃酸の方が酸性の強さは強いです。
この酸性の液体は胃の中にあれば問題ないのですが、その他の場所に行くと問題が起きます。胃の壁は胃酸による刺激を防御できるようにできていますが、その他の場所には胃のような壁はありません。したがって、胃酸からの刺激をそのまま受けてしまい、荒れてしまうのです。
胃液が逆流すると最初に食道を通ります。胃液は食道の表面を溶かしてしまうので、嘔吐すると食道の表面は荒れてしまいます。この状態を医学的には「逆流性食道炎」と呼びます。
食道を通るとその次は口に入ります。吐いた後に歯が「キュッキュッ」と鳴った経験はないでしょうか。これは胃液によって歯が溶けているのです。
炭酸飲料を飲みすぎると歯が溶けると言われたことはないでしょうか。これも炭酸飲料は酸性の液体だからです。
このように胃液は食道や歯を溶かしてしまうので、嘔吐を繰り返すと逆流性食道炎になったり歯が溶けたりしてしまう可能性があります。
・胆汁の逆流
胆汁は肝臓で作られる液です。最終的に十二指腸に分泌され、食べた物に含まれる脂分の消化に関わります。
消化に関わる液体なので、胃酸と同様に逆流すると食道の表面を溶かしてしまいます。胆汁も十二指腸の中にあれば問題ありませんが、逆流して食道に入ると問題になります。
胆汁に含まれる成分は脂分を消化させるので、胃酸と同様に食道の表面を傷つけてしまいます。
また、逆流性食道炎を放置しておくと気持ち悪いだけでなく、食道がんのリスクが高くなると言われています。
嘔吐は毒物を体外に出すための大切な手段ですが、体に負担がかかるので極力しない方がよいです。
二日酔いで嘔吐をするときの注意点
これまで説明してきたように、吐くことは異物を除去するための究極の選択肢です。吐くことは極力我慢した方がいいですが、どうしても気持ち悪いときは一度嘔吐してしまった方が楽になる気がします。
私は少しの気持ち悪さでは何もしませんが、何も食べられないほどの吐き気の時には敢えてトイレで吐くようにしています。完全ではありませんが、吐いたら治るような気がします。
しかし、二日酔いの時は胃に何も入っていないことがほとんどなので、ごくわずかな胃液しか吐くものがありません。そこで吐く時に少しでも体に負担がかからず、吐きやすくするために私が実践している方法を紹介します。
それは、吐く前に多目の水分を摂ることです。
私は吐く前にコップ2〜3杯の水を飲むようにしています。水分を多めに摂取した後に嘔吐することで、嘔吐物の量は増えるので吐きやすいです。特に二日酔いの時であれば、ほぼ水を吐くようになります。
また、大量の水分が胃に入ることで胃が反応して、吐きやすくなります。こうすることで吐いたらすっきりします。
なお、この方法はあくまで最悪の場合のみ使用した方がよいです。頻繁に行うと、当然のように食道や口の中が胃液や胆汁で傷ついてしまいます。また、嘔吐すること自体が体力を消耗する行為なので、疲労回復にも時間がかかるようになります。
嘔吐した後の対策
嘔吐をしてそのままにしておくとさまざまな問題が起きることがあります。体はしんどい状態ですが、少しでもダメージを減らすために以下の対応をするようにしましょう。
水分を摂る
嘔吐をしてしまうということは、体内にアルコールやアセトアルデヒドが大量に含まれていることを意味します。したがって、吐き気を改善するためにはこれらの物質を早く体の中から除去する必要があります。
アセトアルデヒドは主に肝臓で分解されますが、一部は尿として排泄されます。水分を摂ると尿量も増えるので、アセトアルデヒドの排泄量が増えます。
そして、水分を摂取するときには、飲むペースに注意する必要があります。一気に大量の水分を摂取してしまうと、それが原因で嘔吐が誘発される可能性が高いです。
水分を摂取するときは、吐き気が悪化しないことを確認しながら、少量ずつ回数を分けて飲むようにしましょう。
うがいをする、歯磨きをする
嘔吐をすると胃液、胆汁が口の中を通ります。そのままにしておくと口の中で歯を溶かしてしまうのです。また、胃液の酸っぱさが口の中に残ってしまい、それにより更に気持ち悪くなることもあります。
そこで、嘔吐をした後はうがいか歯磨きをして、口の中を洗浄するのがよいです。
口の中を洗うことで、残った胃液や胆汁を除去することができます。また、口の中に残る酸っぱい臭いも改善できます。
嘔吐物が黒いまたは赤いときは要注意
嘔吐物の色が、食べた物や飲んだ物の色だったり透明だったりする場合は大きな問題はないですが、黒色や赤色のときは危険な状態であることがあります。なぜなら、出血をしている可能性があるからです。
嘔吐をすると胃や食道に負担がかかり、ダメージを負います。その結果、胃や食道が傷き、出血してしまうことがあります。
私は学生の頃に大量のお酒を飲んで記憶がなくなった経験が何度もあります。そしてある日、朝目覚めたときに喉のあたりに変な痛みがありました。後日友人に話を聞くと「吐いたら血が混ざっていた。正直死んだかと思った」と言われました。
どうやら大量に嘔吐をしたときに食道が切れてしまったようです。喉の痛みは比較的早く治ったので、病院に行くことはありませんでしたが、一歩間違えれば命を落としてもおかしくない状態だったと思います。
このように嘔吐したものに血が混ざっているときには危険な状態です。必ず病院に行くようにしましょう。
仰向けにならない
吐いた後に横になる場合、仰向けにはならないようにしましょう。理由はさらに嘔吐をしたときに、嘔吐物が詰まってしまい窒息する危険性があるからです。
通常の体が元気な時であれば、何かが詰まって窒息しそうになっても咳をすることで改善できます。しかし、嘔吐して横にならないといけないほどの状態であれば、詰まったものを除去できない可能性が高いです。
また、うつ伏せは胸が圧迫されて呼吸が苦しくなるので避けた方がいいでしょう。そもそも二日酔いで吐き気に襲われているときには、気持ち悪くてうつ伏せにはなれないと思います。
横になるのであれば体を横にして、万が一嘔吐をしたとしても嘔吐物が喉に詰まらないような体勢をとる必要があります。
このような体勢をとることで呼吸を楽にし、嘔吐物による窒息を防ぐことができます。
一人にならない
嘔吐を繰り返している状態は大変危険な状態です。そのまま放っておくと急性アルコール中毒で命の危険になる可能性があります。また、前述のように嘔吐後に窒息するリスクもあります。
さらに、水分をとっても全部吐く、呼吸が浅い、体が冷たいなどの状態の時は一人でいるのはとても危険です。これは早めに救急車を呼んでもらった方がよい状態です。
このように、嘔吐を繰り返している時に一人でいることは命の危険に曝される可能性があります。できるだけ誰かに介抱してもらうようにしましょう。
まとめ
二日酔いで気持ち悪い時に嘔吐すべきかについて解説してきました。
どうしても気持ち悪い時には我慢をする必要はなく、吐いてしまった方が体にとってはよいです。しかし、嘔吐をすることは体に大きな負担がかかり、逆流性食道炎などが起きるリスクがあります。
万が一嘔吐をしてしまっても、水を飲んだり、口の中を洗浄したり、体を横にして休めたり、それ以上状態が悪化しないようにする必要があります。
嘔吐をするというのは正常な状態ではありません。特に出血をしている場合は命に関わることもあります。お酒を飲む前後で適切な対策を取り、急性アルコール中毒や二日酔いにならないようなお酒の飲み方をするようにしましょう。